公開をしよう

 完成したら公開する。公開しなければ完成しない。それが映画です。他人に見せてはじめて私たちの映画製作が完結します。お蔵入りは未完成と同じです。誰かを感動させてこそ映画です。受け手の喜怒哀楽、どの感情に訴えようと、訴えなくては苦労して映画を作った甲斐がありません。あらゆる機会を設けて公開しましょう。

 ビデオ映画で、公開スペースが十畳くらいならば30インチ程度のテレビがあれば済むでしょうが、映画公開の醍醐味は見ず知らずの他人様を巻き込んで観客にしてしまうことにあるのです。

 各種の映画祭に応募することはもちろん、大切なことです。が、審査員が望んでいるのは新しい才能だったりします。審査員好みの映画を作ることなどは私たち本来の映画製作の趣旨に反します。審査員と製作者の波長があったときに、入賞したり、更なる公開の場を与えられたりするわけですが、それはそもそも難しい。審査員の受けを狙った作品を作る必要はないのですから、映画祭に出品することを目標としてはいけません。それは映画製作の最後の落ち着き先だと思いましょう。その前に自主公開をして、多くのみなさんに見てもらうことです。

 一番、手堅い公開方法は学生ならば学園祭、社会人ならば市民文化祭などで公開することです。その際の上映機材は出来る限り公共のものを借りてみましょう。意外と社会教育事務所とか、市の図書館とか、最近流行の生涯学習センターなどに、立派な機材が眠っているものです。ビデオプロジェクターやスクリーンも大体はただで借りられます。

 ホールを借りるとなると何かと費用がかかることでしょうが、市民文化祭などの企画が進行している段階で、思い切って実行委員会などに申し込んでみるとよろしい。なにしろ文化的な企画がないことではどこの実行委員会も困っているはずですから。アンパンマンのビデオとかを子供向けに上映するというくらいでしか視聴覚機材なんて使われていないものです。

 市民文化祭などのイベントに便乗するのが一番しやすい手ですが、それが出来なければすべてを0から始めなくてはいけません。自分たちで会場を捜して借りなくてはなりません。公共施設は規制が厳しいかも知れませんが、賃貸料はかなり安いはずです。先ずは当たってみましょう。アクセスのいい、そこ自体が人気のある貸ホールは賃貸料も高いですが、そこは駄目元で当たってみましょう。営利目的でない場合はホール主が侠気を出してくれれば、格安で借りることも可能です。

 公開が決まったら、後はパブリシティです。宣伝しましょう。小学校や中学校、高校、大学、近所にあるすべての学校には宣伝にいきましょう。社会人よりも暇で好奇心旺盛な学生さんたちを呼ぶに越したことはありません。人の集まるスーパー、コンビニ、公民館や駅や、ありとあらゆるところに宣伝に行きましょう。ポスターを貼るだけよりも、面と向かって話しかけてチラシを手渡してみましょう。有名芸能人が出ている映画だってはずれるのですから、自主映画なんて見てみたいなんて思う人は滅多にいません。その滅多にいない人を呼ぶためには口コミの威力、噂の影響力が必要です。

 ありとあらゆる手を尽くしても、フリーのお客はなかなか来てくれません。心ない観客は当然のように「つまんない。」といって途中で会場を出て行くかも知れません。それでもめげずに公開し続けましょう。公開しなければ映画は完成しないのです。また、公開できなくなったときに映画は消えてしまうのです。自分たちの作った映画を消さないために、あらゆる機会を捉えて公開し続けましょう。

 忘れられた時がその映画の消える時なのです。映画が忘れられるということは、それに関わった多くの人たちの志が時の狭間から消えてしまうということなのです。私が過去に携わった自主映画のリストを紹介している理由の一つはそれなのです。みなさん、頑張りましょう。

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