ロケハンをしよう

 ロケハンとは撮影場所を前もって検分していくことです。最初から行き当たりばったりでロケをすると言うことはないと思いますが、余裕があれば撮影の日と同じ曜日、同じ時間帯にロケハンしておいたほうがいです。その際には監督とカメラマンがいれば十分かと思います。実際の撮影現場では、スタッフを仕切るのはどちらかというと撮影の仕事。キャストを仕切るのは監督といったかたちで分業した方がスムーズであるので、この二人がいれば十分です。これに製作が参加していれば完璧です。監督はロマンチストであり、製作はリアリストです。お目付役として製作が参加していて、監督と撮影の暴走するのを防ぐことはある意味重要です。監督と撮影がとかく演出やアングルに懲りすぎると映画の製作が滞りがちになりますので、監督たちの首に鈴を付けるのは製作の仕事ですから。本当は助監督も参加しているべきなのですが、素人集団でもなかなかスタッフ集めは難しいと思われますので、贅沢はやめましょう。

 実際に監督が現場でカメラをのぞいて、演出を考え直す。絵コンテを練り直すことが必要です。ロケハンとは絵コンテ通りの絵を撮れる場所、監督のイメージ通りの映像を撮れる場所を探すことです。そのためには監督が実際に多くの場所を取材しなければなりません。撮影現場でスタッフに「あの山をどかせ。」と言った有名な監督がいますが、それは無理というもの。最初に絵コンテを全スタッフに見せて、ロケ地をスタッフ全員で探すことが賢明と思われます。その方が効率的だし、スタッフも自分の意見が採用されたと思うと嬉しいものですから、撮影にも熱意がこもるでしょう。キャストは撮影現場で、何度かリハーサルをするわけですが、監督や撮影にリハーサルはありませんので、前もって演出プランと段取りをつけておくことがどうしても必要なのです。現場でカメラの位置が決まらなくて、あれこれ移動しているうちに時間を浪費したり、スタッフの士気が下がったりするのは避けたいところです。

 セット撮影と言うことはおよそ考えられませんので、オールロケと言うことになります。特に野外や室内シーンの時に気をつけなくてはならないのは照明の電源です。昼間でもブルーランプを焚いた方がキレイに撮れますので、電源が近くにある限りランプを焚くことを考えた方がよいです。照明に使うランプは500ワット二つで間に合わせていましたが、できれば三つ欲しいところです。但し、アパートなどで迂闊に照明をフルに焚くとブレーカーが落ちたりして危険です。なるべく銀レフを使った方がよいでしょう。発泡スチロールの板にアルミ箔を貼り付けたようなものを市販していますが、台所のアルミホイルを一度くしゃくしゃにしてからスケッチブックに貼ったものでも、十分代用できます。照明はとにかく熱を持ちます。触れば火傷してしまいますので、軍手を用意して十分に気をつけることです。

 ロケハンはしていても、所詮は当たって砕けろ的な撮影も必要です。「いけない40年ロマンス」では皇居に関するシーンで、二回行いました。一度目は単純に日の丸の旗の波が欲しくて、天皇誕生日……今のみどりの日ですが、その日に「一般参賀」に混じって皇居内に潜入。ロケ隊を三班に分けて日の丸の小旗が振られるシーンを撮影しました。二度目は主人公が天皇に直訴(!)をするために、皇居の坂下門に向かって真っ直ぐに歩いていくというシーンの撮影です。最終的には警備の警察官に頼みこみ、多少演技をしてもらいました。皇居前の広場は当時は環境庁の管理下だったそうで。製作進行が実際に環境庁にロケの許可をもらおうと電話をかけてくれましたね。

 喫茶店のシーンはつきものなのですが、近場でロケばかりしているといつも同じ店ばかりに撮影を依頼してマンネリ気味になってしまいます。「我が友ハリケーン」ではスナックの場面が多いために、映研の馴染みのスナックを借り切って撮影しました。昼はスナックは営業していませんから、好都合でした。また「いけない40年ロマンス」では喫茶店の代わりに東京電力世田谷支社の応接セットを借り受けて、そこを喫茶店に見せかけて撮影しました。まめに、あちこちを見て回るといざというときに役立ちます。

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